2006.08.24

■貴志祐介 [小説家]

貴志祐介貴志 祐介(きし ゆうすけ)
本名:非公開
1959年1月3日、大阪生まれ。
京都大学経済学部卒業後、朝日生命入社。その後フリーとなり、現在はベストセラー作家。

著作:
1.『十三番目の人格(ペルソナ) -ISOLA-
 第3回(1996年)日本ホラー小説大賞 長編賞佳作
2.『黒い家』第4回(1997年)日本ホラー小説大賞
3.『天使の囀(さえず)り
4.『クリムゾンの迷宮
5.『青の炎
6.『硝子(ガラス)のハンマー』第58回(2005)日本推理作家協会賞
7.『新世界より』
8.『狐火の家』

映画化:
1.『黒い家』(日本版)
2.『ISOLA 多重人格少女
3.『青の炎
4.『黒い家』(韓国版)

好きなのは『クリムゾンの迷宮』→『黒い家』→『天使の囀り』の順。だって、ホラー好きだもん♪
漫画化もされているようだから、マンガ喫茶に行って読もうと思っている(マンガは苦手なのよ)。
映画に出演していたらしい、全然気付かなかった。
『KADOKAWAミステリ』に2001年8月号まで「死が二人を結ぶまで」を連載していたそうだ。
1000年後の未来を描くSF小説『新世界より』が講談社から刊行予定らしい。

日本にこんなに面白い小説家がいたなんて、全然知らなかった。たぶん、もっとたくさんいるんだろう、私の視野が狭いだけ。

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2006.08.23

■青の炎 [映画 貴志編]

青の炎
青の炎』(2003)日本
 監督:蜷川幸雄 原作:貴志祐介

かつて母が結婚し、離婚した自堕落な義父・曾根がある日突然、家に居座ってしまった。
酒に溺れ、妹にからみ、母に手を出す男を憎む17歳の高校生・櫛森秀一。
日増しに募るやり場の無い怒りから彼を排除する策略をめぐらせる…サスペンス

貴志祐介の小説の映画化3本の中で一番まとも。
第一にイヤフォンを使わなくてもセリフが聞こえた。

ほぼ原作に忠実で丁寧に作られ、キャスティングもなかなか、(青の炎が無かったけど)クールな雰囲気で、中堅どころのシリアスな青春ドラマと言えよう。
ただ、気になったのは曾根が死ななければならないほどの極悪人に描かれていないところ。そして、あのシーンは音楽のタイミングも良く、山本寛斎(曾根)の表情が良かった、ビックリよ。

やはり秀一と紀子のやりとりにイライラ、早送りしたくなった。貴志氏の原作では無かったら、私は絶対に観ないであろう傾向の映画なんだから仕方が無い。

二宮和也(秀一)は最初、茶髪で子供っぽいのが気になったけど、まぁまぁ良かった。鈴木杏(妹)とのやりとりも好感、単なるアイドル映画とは違っていた。
あやや(紀子)が全く笑わず、ブスッとしっぱなしなのはどうしてか分からなかった。彼女のアイドルとしてのイメージってこんななのだろうか。
お母さんって秋吉久美子だったのね。意外だったけど、いくつになってもフワフワした感じで、こんな風に私もトシをとりたいものだと思った。

流れる曲はPink Floyd「The Post War Dream」(The Final Cut)

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2006.08.22

■ISOLA 多重人格少女 [映画 貴志編]

ISOLA イソラ
ISOLA 多重人格少女』(2000)日本
 監督:水谷俊之 原作:貴志祐介

阪神大震災直後、東京からボランティアとしてやって来た由香里は、雨の中、犬に吠えられている少女を見かけ、しばらくしてから犬の死骸を発見する。
後にその少女・千尋を紹介され、多重人格者である事を知る。テレパスである由香里は自分自身と重なる彼女を13番目の人格・イソラから救おうとする…ホラー

昨日の映画『黒い家』の後では安心して観れるホラー映画。暗い雰囲気、映像の隅を横切る黒い影、何か不穏なモノを感じさせる。

後で説明が多少入るが、かなり話がはしょられていて、予備知識の無い人が観ても理解できるのか疑問だった。
ただ原作を読んでいる私としては、小説上では自分で想像するしかないイメージが具体的に視覚化されていたのは良かった。それと大学の旧校舎全体が映し出されるシーンが効果的。
結局、ジャケット画像と内容とは全然関係無かった。
男性なら楽しいかもしれない、気軽に観れるB級ジャパニーズホラーと言えるかも。

黒澤優(千尋)がきれい。彼女は黒澤明監督の孫で元アイドル・林寛子の娘で、今はSOPHIAのボーカル松岡充の妻だそうだ。

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2006.08.21

■黒い家 [映画 貴志編]

黒い家
黒い家』(1999)日本
 監督:森田芳光 原作:貴志祐介

昭和生命保険北陸支社に勤務する若槻が、女性からの電話で「自殺でも保険は出るの」との問合せに業務規定に反して応えてしまった事から、菰田邸で子供の首吊り死体を発見する。
警察がなかなか自殺と判定しない為保険金がおりず、菰田夫妻は執拗に若槻の元へ催促に訪れる…ホラー

噂通り、ヘンな映画だった。
緑と黄色の鮮やかな色彩を使いポップに表現され、そしてコミカルな雰囲気さえ漂わせている。製作当時の流行だったのだろうか、ホラーに軽さは不要だ。
“黒い家”なのにあまり黒くなく、時折挿入される無関係な映像はCMタイムを思わせ、「京都から金沢」発言にシラけてしまった。
見た目が健康的な菰田夫妻、まぁおかしな二人と言えるかも。でも、追い詰められた若槻が伝わって来ない。
後半にやっと緊張するような暗いシーンが出てきて良かった、特に包丁キラリ~ン

しがないサラリーマン石橋蓮司がいい。
怪しい刑事だな~と思ったら、町田康(町田町蔵)だった。
この監督はホラーにエロはつきものだと思っているのだろうか、原作にそんな部分は無い。
コロコロ雰囲気が変わるので、観ていてナンカ疲れる映画だった。

追記:
歩いていて、ひらめいた。
この映画の監督はデヴィッド・リンチの『ブルーベルベット』を意識していたのではないだろうか?
オープニングのひまわりは薔薇、緑や黄色は『ブルー~』では青や赤を効果的に使っていた。と言う事は、西村雅彦はいかれたデニス・ホッパー、大竹しのぶはセクシーなイザベラ・ロッセリーニかな。でも、内野聖陽はカイル・マクラクランと思いたくないのぉ~

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2006.08.20

■硝子のハンマー [小説 貴志編]

The Glass Hammer by Kishi Yusuke
貴志祐介/著『硝子のハンマー』(2004)角川書店

日曜の白昼、厳重なセキュリティに守られた介護会社内で社長が何者かに撲殺された。犯人として疑われたのは続き部屋でしどけなく眠っていた専務。
専務の無実を信じる弁護士・青砥は防犯コンサルタント・榎本の元を訪れる…ミステリー

本格推理小説は久しぶり、犯人は誰かなとあれやこれや。
しかし後半に差し掛かってから様子が一変、そしてデジャヴ感。

前半は青砥と榎本の掛け合いも楽しく気軽に読んでいたが、後半は感情移入してしまい複雑な気持ち。
ジェイムズ・エルロイにもこんな感じの小説があったが、あちらはリアルタイム。こちらはいい意味で裏切られ、さすが貴志祐介は面白い。
そしていつもながら、綿密な下調べの上書かれたのであろう背景描写。作者は生命保険会社だけでは無く、こんなに色々な仕事を経験しているのかと勘違いしそう。『青の炎』でも思ったが、作者も登場人物と同じく秀才であったのだろうと勝手に想像している。

“虚無の扉”でおしまいかと思ったら、更にオチがあった。こんなところもいい。
前半は良い人悪い人がはっきりしていて、先入観を持たせられてしまったが、後半は灰色。後半部分の方が好きである。

P261「釘を打つように頭が沈み込んでいく。」
彼のこんな表現が好きだ、絵が見えるよう。
ネタバレ

追記
映画を観ていて知った。
この本の発売前のタイトルは『見えない扉』だった。

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2006.08.17

■青の炎 [小説 貴志編]

青の炎
貴志祐介/著『青の炎』(1999)角川文庫

母と妹と3人でつつましく暮らして来た17歳の高校生・櫛森秀一。
突然家に押しかけ、勝手に居候を始めた男は、彼を子供の時に殴り、母は逃げるようにして離婚した義父だった。
昼間から酒に溺れ、子供の金を持ち出してギャンブルにつぎ込む。母だけでなく妹にまで迫る元・義父に危機感を抱き、次第に殺意をつのらせる…スリラー

相変わらず緻密な描写で京都ならずも湘南も詳しいのか、貴志祐介。

彼が書いた本で無かったら、購入しないであろう表紙デザインとTVドラマのような裏表紙のあらすじ。
秀一と紀子のやりとりがダルくて、何度も中断してしまった。
あとがきにも書いてあったように、これは「青春小説」。私には遠い過去すぎて共感できなかったが、同年代だったら分かりやすくスラスラ読めるかも。
それでも、家族を守ろうとする秀一に同情できる部分もある。
しかし嫌いな人間を即、消去なんて短絡的な思考はやはり子供っぽい(が、中年男が書いた小説よ)。色々と穴があるが、そこも狙っているのだろう。せつないと言うより、あやうい。
私にとって内容はともかく、ラスト2ページは余韻が残った…

読んでいる途中「これ、あややが出てた映画だ」と言われ、それ以降、紀子があややのイメージとかぶって困った。CMぐらいでしか彼女を見た事ないから、グレたあややが全く想像できない。スケバン刑事? 今はまえけんのイメージが(困)

追記:
ラストに気をとられて忘れてた。
古文とか漢文とか、すんなり頭に入らず読み砕かなきゃならない古い言い回しの文章が苦手である。
父が遺した書物で読めたのは小泉八雲の『怪談』ぐらい。リルケの詩集も話した事が無い言葉の羅列、夏目漱石『吾輩は猫である』はタイトル自体納得できず、川端康成、スタンダール等々ナンか小難しすぎてパラッとめくってすぐ閉じた小学生時代。そのせいか今まで古典小説などあまり読んだ事が無い。
『青の炎』には中島敦の『山月記』、夏目漱石『こころ』について書かれているが、分かりやすく解説され、絶妙な引用で頭の中でイメージでき、良い印象を与えてくれた。

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2006.08.12

■十三番目の人格 -ISOLA- [小説 貴志編]

Isola by Yusuke Kishi
貴志祐介/著『十三番目の人格(ペルソナ)-ISOLA-』(1996)
 角川ホラー文庫

人の強い感情を読み取るエンパス・賀茂由香里は阪神大震災のボランティアとして人々の心のケアにあたっていた。
そこで出会った女子高校生・森谷千尋は、5歳の時、交通事故に遭った辛い経験から多重人格となっていた。話している間にも次々と表情を変え、様々な性格が出現するが、冷酷で凶暴な13番目の人格<イソラ>に背筋が凍る思いをする…ホラー

人の心を読み取るテレパシーとまではいかないエンバス、まるでSFだなぁと思いながら読んでいたが、だんだんオカルトっぽくなって来て、何だこりゃ~
「う~む、さすが貴志祐介」と最初は感じたが、第3回日本ホラー小説大賞の“大賞”となり得ず“長編賞佳作”だったのが何となく分かった。でも、処女作で入選しているのだから、やっぱり凄い小説家だ。

他の小説と同じく綿密に調査されてはいるのだけれど、説明が足りなくて専門用語がちょっとイメージできなかった。絵がついてるともっと良かったかも。
でもこの表紙はいただけない。先日レンタルショップでDVDを見かけたから、映画のワンシーンなのだろうか? 彼の小説は3作映画化されているみたいなので、今度観てみようと思っている。

で、この本は…怖くない。同情すべき千尋と由香里に感情移入出来ないが、カウンセラー・野村浩子は感じが良かった。淡々と読みましょう。
連想したのは映画『アルタード・ステーツ』とJoy Division『Closer』。叔父が知人に似てて困惑…
ネタバレ

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2006.08.06

■天使の囀り [小説 貴志編]

Chirping of Angels by Yusuke Kishi
貴志祐介/著『天使の囀り』(1998)角川ホラー文庫

ホスピスの精神科医・北島早苗の恋人である作家・高梨光宏は新聞社主催のアマゾン調査隊に参加した。
現地から近況や他のメンバーの人となりをメールで伝えてくれていたが、トラブルの為予定を繰り上げて急遽帰国した。
以前と全く違ってしまった高梨に戸惑う早苗、彼は宙の何も無いところを見つめて言う「天使の囀り(さえずり)が聞こえる」。そして、自ら命を絶ってしまう。
新聞社からの電話で彼以外のメンバーも自殺した事を知る…ミステリー

淡々とストーリーが進んで、いつになったら核心に迫るのかジリジリした。
クリムゾンの迷宮』のような切迫感は無いが、綿密に調べ上げられた内容で、これが本当にある話なのかどうか分からない。しかし、内容がとても興味深いので事実だと思いたい。そうだとしたら、とてもおぞましい。

やはり「オイオイ」と言いたくなるような行動をとる、警察呼べよ~
でも警察を呼んでしまったら、そこで話が終わってしまう。
紆余曲折するからこそ、この小説が面白い。
一見関係が無い、荻野信一もしかり。

感想文だったらネタバレもありだけど、ネットでは読んでいない人の為に詳しく書けないのがちょっと辛い。
いくら自分が良くてもねー、あんなのは嫌よ。彼にとっては良かったのかな…

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2006.08.04

■黒い家 [小説 貴志編]

The Black House by Yusuke Kishi
貴志祐介/著『黒い家』(1997)角川ホラー文庫

保険会社で働く若槻は客からのクレームで菰田邸に赴く。そこは黒く、異様な臭気が漂う家だった。
家主にうながされふすまを開けると、菰田家の長男・和也の死体がぶらさがっていた。
それから菰田が毎日毎日「保険金はまだか」と窓口を訪れる…サイコ・ホラー

最初は静かに忍び寄る恐怖だったが、だんだん圧倒されてしまった。
この恐怖を終わらせる為には読み進むしかない。
しかし読み終わっても、もやもやした物が残る。
エンディングが悪いわけでは無い。
現実にあり得るような話だったからである。
実際にあった、あんな事件やこんな事件を思い起こさせるのだ。

今までサイコ・ホラーは海外の翻訳物ばかり読んできた。
だって日本が舞台だと「こんな事あるわけないじゃん」とリアリティが感じられないからだ。例えばヒッチハイカーが次々と行方不明になるなんて、日本ではあまり考えられない。

しかし、この小説は緻密な描写に想像をかきたてられ、あらかじめ布石がまかれたり、具体例をあげたりしているので納得させられた。さすが、以前保険会社で働いていただけあって説得力がある。
たった一つしか無い命をどこにでもあるお金と両天秤にかける人々、そんな人達を相手にする方々の苦労が忍ばれる。

映画『黒い家』の評判がかんばしく無かったので、今まで本を手に取った事すらなかったが、緊張をやわらげたくて先へ先へとつい行を飛ばして読んでしまい、いつの間にか息を止めてしまっているほど怖ろしさを感じる小説だった。
ネタバレ

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2006.07.26

■クリムゾンの迷宮 [小説 貴志編]

Crimson Labyrinth
貴志 祐介/著『クリムゾンの迷宮』(1999)角川ホラー文庫

失業中の男・藤木が違和感を覚えながら目覚めると、そこは奇妙な岩山が連なる深紅色の世界。傍らには水筒とランチボックスと携帯ゲーム機。
ゲーム機のスイッチを入れた時から始まる、生死を賭けたサバイバル・ゲーム。望んでもいないのに、突然不条理な世界に投げ込まれた9人の男女による死闘の記録…ホラー

いやぁ~ 面白い小説だった。映画や本を読む度、面白いと軽々しく言っているが、これは本気。後付けの増刷数を見ればおのずと分かるであろう。
布団の上で読み続けていたら、外から出航や始発の音がする。これはヤバイと取り合えず2時間ほど寝てから出勤、こんなに仕事を休んで本を読みたいと思ったのは久しぶりである。
仕事中も続きが気になって、気になって…ノンストップ・ホラーと言われるだけある。

まるでRPG、まさに小説内にも80年代に流行った懐かしの“ゲームブック”が登場する。指示された番号の項目へ飛ぶと話が分岐し、最後は<バッドエンド>や<ハッピーエンド>などになる。だいたい私は素直じゃないから、ノベライズゲームにしてもすぐにバッドエンドになりがち、ゲームオーバー。

まるで社会の負け犬のような者達が集まり、それぞれのアイテムを勝ち取り、ゲーム機の指示に従ってチェックポイントへ進む。鈍感だが慎重な藤木と漫画家志望の女性・大友はどうなっちゃうのとハラハラドキドキ。
そこには“人間の悪意”が加味され、どんどん泥沼へとはまって行く。
ポケットゲームのキャラクターも悪趣味という点で雰囲気を高めてくれる。
ドラマや映画のように、思ったように話が進むので結構安心して読めるが、そこに“悪意”があるもんだから、主人公に感情移入してしまって目が離せない。
いつも翻訳本を読んでいるが日本人が主人公だからなおさらである、日本の小説家は侮り難いとつくづく。

現実的にはあり得ない話だけど、嫌悪感と緊張感でクラクラできる小説だ。が、しかし…
ネタバレ

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