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    *Hello Nico Another World

2014.01.19

■金色機械 [小説]

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恒川光太郎/著『金色機械』(2013)文藝春秋

時は江戸時代。
親に捨てられ山を彷徨う熊悟朗は、偶然出会った山賊の一味に拾われる。
その時、居合わせた親に売られた少女紅葉と共に山の中の竜宮城にたどり着く。そこで出会ったのは金色に輝く月から来た神様”金色様”。
熊悟郎は門番として仕事に励み、日々鍛錬し技を磨いてゆく。やがて、一緒に育った利発な紅葉と夜を共にする…ファンタジー

待ちに待った恒川光太郎の長編。
単行本を見て、その分厚さに少々焦った…読む時間があるかな?
しかし本を開いて、それは杞憂と知る。文字は大きく、紙は厚い。何より読みやすく面白い、一晩で読み終わった。
今回は目次に年代が記載されていたので、次は誰を語るのか予測はできるが、やはり先が読めない展開でワクワク。頭脳内冒険が始まった。

時代小説はほとんど読まないがこの本はSF、超能力者や宇宙人が出てくる。
特に金色様はロボットなのであろう、想像するにスターウォーズの背の高いやつ”C-3PO”。これがなかなか良い味を出していて、前半と後半のイメージが違っている。そして、『ロード・オブ・ザ・リング』とか『ターミネーター』といったタイトルが頭に浮かんで来る。『E.T.』もかな…かぐや姫ではないのよ。

色々な登場人物が出てくるが、結局は熊悟朗と紅葉の物語だと思う。
そのまま添い遂げれば、ありきたりの話で終わるが、そうならないところがこの小説家を好きなところ。

この本は『雷の季節の終わりに』のように緊張感で手に汗握る内容では無いが、紅葉が語る「心に雲みたいに浮かんだことを、ふわりふわりとね。」そんな感じ。

2012.11.25

■金色の獣、彼方に向かう [小説]

金色の獣、彼方に向かう by Tsunekawa Kotaro
恒川光太郎/著『金色の獣、彼方に向かう』(2011)双葉社

「異神千夜」
13世紀、中国人貿易商の養子となった少年・仁風。
運命の波に揉まれ、再び日本へ戻る。また、彼と共に海を渡って来た妖怪が姿を現す。

「風天孔参り」
孤独な中年・岩渡は、美しい20代の女性・月野優に熱を上げる。
年の離れた彼女が語る不思議な話。殊更気にもとめていなかったが、現実と知り、打ちのめされる。

「森の神、夢に還る」
森を漂う精霊は、未来に胸を高鳴らせる女性と共に旅をした。
着いた場所は東京、多種多様おかしな人も居た。そして思い出す、泉のほとりの出来事を。

「金色の獣、彼方に向かう」
樹海を川ではさんだ草原で少年と少女は出会った。そこで、見つけたイタチにルークと言う名を付けて飼い始める。
やがて少女は少年に無理な要求を突きつけ、ルークを連れ去ってしまう。

2005年、第12回日本ホラー小説大賞『夜市』の作者・恒川光太郎のホラーファンタジー短編4作。
長編の方が好きなのだが、平山夢明同様なかなか上梓されないのでヤキモキしてしまう。アイディアの小出し?
恒川の場合は素敵な作品なのだから、もっと肉付けしてから四部作にし、何年かおきに出版しても良いのにと思う(とは言え「風天孔参り」は別)。

短編だが共通点は鼬(いたち)、緑の目をした金色の生き物だ。そしておそらく富士山麓樹海がある山梨県を舞台にした物語。

淡々とした文章なのだが、何故だか空恐ろしかったり、物悲しかったり。
特に「異神千夜」の蒙古来襲と鹿川村の描写を想像しないように自分を戒めなければならない。
「金色の獣、彼方に向かう」の少女・千絵を救えたならと無力感を覚え、「森の神、夢に還る」P186では『夜市』『雷の季節の終わりに』の爽快感が味わえる。

“サンカ”、“ホイト”久しぶりにこの言葉に接した、子供の頃以来かも…

2010.04.14

■七つの死者の囁き [小説]

Nanatsu no shisya no sasayaki
アンソロジー七つの死者の囁き』(2008)新潮文庫

2005~2008年「小説新潮」に掲載された作家7人によるホラー短編集、作家名を知っていても二人しか読んだ事が無くて、目的は吉来 駿作だったのだが、思いのほか道尾 秀介が面白かった。でも、この本を読んだ後に夢中になったのは恒川 光太郎
厳選されているだけあってどれも秀作、ホラー嫌いの方にもおすすめできるお得なベスト版といったところ。

有栖川有栖「幻の娘」
刑事の早川は他人が見えないモノが見える。同じく居るはずの無い娘と会った男の無実を確信し、証拠集めに奔走する…
よくある話(?)だが、『シックスセンス』のような悲壮感は無く、早川の正義感に好感を持てて、読後感も良い。

道尾秀介「流れ星のつくり方」
旅行先で一人夜空を見上げていた時、音楽が聞えて来た。近所の民家の窓辺に佇む少年と共にラジオドラマ「星の王子さま」を聞く…
いつ怖くなるのかと身構えながら読んでいたが、全然ホラーらしくなく、むしろ気持ちがホッコリ(可哀そうではあるが)。思い込みによって曇っていた心にオチが沁みる。

石田衣良「話し石」
1001個の話し石を集めるとひとつだけ願いが叶う、S氏はとうとう目的を達成した…
人気作家の小説を読む機会がほとんど無いので、こういうアンソロジーはありがたい。星新一に献辞を述べているだけあって、とても雰囲気が出ていた。

鈴木光司「熱帯夜」
大学4年生の雅人、人生を順調に歩んでいたが、他の娘とはちょっと違うエキセントリックな奈保美を選んだが為に…
『リング』しか読んでいないけど、結構この作家の小説は暗い。最後のオチは茶目っ気なんだろうか、読み手によって解釈が変わるかも、私は前向きに考えたい。

吉来駿作「嘘をついた」
幼馴染の裕子、千莉、そして僕。偶然出逢ったオッサンの協力を得ながら、自殺した裕子のメッセージを汲み取る為、コンタクトを取ろうとする…
幽霊話なんだけどつい笑ってしまう。オチに唖然としたが、それでも納得できたから良いし、オッサンの解釈には説得力があった。吉来氏は伏線の張り方が上手いんだな~

小路幸也「最後から二番目の恋」
琴美と真理恵、小学5年生の時に出会ってからずっと親友。最期の時に人生を振り返る…
ホラーというより、ファンタジー。人生をやり直すより、生まれ変わる方が良い。

恒川光太郎「夕闇地蔵」
寺で拾われた子供・地蔵助、他人が見えないモノが見える。行方不明になった子供達の跡をたどり彼らを連れ帰ったり、どこからかやってくる雨蛇さまが見えたり…
恒川氏らしい郷愁を誘うダーク・ファンタジー。<他人が見えないモノ>と言ってもありきたりでは無く、誰も追随を許さない<恒川印>がついていそうなオリジナルなモノが素晴らしい。そして、『雷の季節の終わりに』にも通ずる、意外な展開に驚く。やっぱり良いね!

2010.03.15

■夜市 [小説 恒川編]

Yoichi by Tsunekawa Kotaro
恒川光太郎/著『夜市』(2008)角川ホラー文庫

ここで手に入らぬ物は無い“夜市”、そこは妖怪達があらゆる物を取引する場所。
ずっと昔、5才の弟を人攫(さら)いに売り渡した裕司は、彼を買い戻す為に友人のいずみを連れて、青白い炎が灯る幽玄な“夜市”を訪れる。親切な老紳士に案内され、再び人攫いの店にたどり着く。「夜市」…ファンタジー/ホラー

角川書店主催の<第12回(2005)日本ホラー小説大賞>受賞作『夜市』(2005)、ライトノベルのような薄さなので手軽に読めるなと思い、古本屋で手に入れた。
“学校蝙蝠”などという、冒頭の異様で詩的な文章にてっきり『姉飼』等の著者・遠藤徹のようなエログロ怪奇幻想だと思ってしまった。
だが、全く裏切られた…
手をのばせば届きそうな、しかし足を踏み入れる事のできない裏世界での美しくも哀しいお伽噺、昭和ノスタルジーとも言える幻想小説2編が収録されていた。

裕司がどういう青年かはわからない、弟の名前さえ明らかにされない。しかし、彼らの苦悩はひしひしとこちら側に伝わってくる。物語が進むに連れ、登場人物の関わりが明らかになった時、ハッと息をのむ。

もがくほど切ないある夜の出来事。
とても余韻の残る話で、誰もがその先を、何かを、5年後を、いずみに、期待するのではないだろうか。

いつの日か 会う。それが、生きる目的だった。(p.72)
いつか涙が止まる夜が来るかもしれない…

*    *   *
12歳の夏、暇を持て余していた私と親友のカズキは、お稲荷さんの裏にある未舗装の道に入り込んだ。しかしそこは神々の道、大昔から日本にある“古道”で本来、人間が来るべき場所では無かった。
青年レンに導かれ、出口へと歩を進めるが、不運にもカズキが命を落としてしまい、死んだ人間を甦らせる事ができると言う“雨の寺”を目指す。「風の古道」…ファンタジー/ホラー

以前、武蔵野市に住んでいたので、容易に風景が想像できる。
畑が点在し、曲がりくねった遊歩道が走る郊外の町。黄土色の自転車で走り回った日々を思い出す。
『ペット・セメタリー』『キタイ』のようなイメージが湧くだろうが、そんな事を言いたいわけでは無い。思いがけない展開に心を動かされるであろう。

どちらも脱出不能なダンジョンに入り込んでしまった少年達の話。
それらは日本が舞台なものだから身近に感じられ、夏休みの思い出のような懐かしい空気が漂い、センチメンタルな気分になる。
言うなれば、トトロや千と千尋の少年版かな(アニメ観た事ないんだけど)。

2010.03.14

■雷の季節の終わりに [小説 恒川編]

Kaminari no Kisetu no Owarini by Kotaro Tsunekawa
恒川光太郎/著『雷の季節の終わりに』(2009)角川ホラー文庫

地図には載っていない隔絶された海辺の漁村“穏(おん)”に住む少年・賢也。
この地には、冬と春の間に“雷季”という天候が荒れ狂う季節がある。
この神の季節とでもいう時期に、“風わいわい”の存在を教えてくれた姉が突然姿を消し、賢也の中に何者かが宿った。
親友・穂高のおかげで平穏な日々を過ごしていたが、行ってはいけないと言われている“墓町”で知人を見かけた時から、賢也の運命の嵐が吹き荒れる…ファンタジー/アドベンチャー/ホラー

“恒川ワールド”2冊目『雷の季節の終わりに』(2006)、孤独な少年の切なくもみずみずしい冒険談。
…とは言っても、少年達のある一日を描いた映画『スタンド・バイ・ミー』では無い。風霊鳥がいるからって映画『ハリー・ポッター』でも無い。
どこかにあるかもしれない異界、現実の世界とちょっとずれた場所にある隠れ里“穏”にまつわる、賢也の人生に影響を及ぼした者達の物語を織り込んだ叙情的な伝奇とも言えるお話。

チェイス物が好きなので、ロバート・R・マキャモン/著『マイン』を思い出した。内容はまったく違うが、逃げる様がスリリングであまりの緊張に一気読み。

殺しにくるということは、殺されても構わぬというのが道理だ。それを忘れるな。
おまえが生き延び、どこか別の地で成長をすることを俺は祈る。そのように祈っている人間が、たった一人としてもここにいることを忘れるな。(p.117)
大渡さん、カッコいい

あるいは、私は明日には殺されてしまうのかもしれないが、今は死よりも生を考えよう。少しでも遠くへ。(p.119)
12歳ほどの少年にここまで言わすか
途中、一見関係の無い話が挿入されるが、これが後半へ進むに連れ、重要な意味を持つ。 読み進めるうちにあちこちに散りばめられていた余談が見事につながり、全てが明らかにされ、やがて訪れる運命の嵐の後、少年は雷から遥かに遠ざかってしまった…

めったに読み返す事の無い私だが、この本は“もう一度読みたい本”No.1だ。またもや引きずる読後感に、一つ残った疑問を勝手に想像してしまう。黄色いシャツの男・早田浩司のイメージは

あー、そうか…これは映画『レオン』なのだな。最後に残った者が協力者を得て、共に禍々しい幽鬼を葬る、和製RPG。
リーダーよ、9月3日。昼。荒川自然公園に集え! そこで、血を空へ巻き上げる男を目撃するであろう…(嘘)

2010.03.13

■草祭 [小説 恒川編]

Kusa Matsuri by Tsunekawa Kotaro
恒川光太郎/著『草祭』(2008)新潮社

様々な知識を与えてくれる叔父と共に山に生きる少年、彼は叔父を失ったときから声を失ってしまう。
そんな少年を救ったのは道に迷った僧侶・リンドウ。物言わぬ少年を“テン”と名付け、人里の暮らしを教えてくれた。
リンドウの孫娘・花梨によって声を取り戻し、周りの人々と共に穏やかに暮らしていたが、再び口の聞けぬ出来事に遭遇する「くさのゆめがたり」…ファンタジー/ホラー

さ迷える“恒川ワールド”4冊目『草祭』、小説新潮に掲載されていた短編が収められている。表紙の雰囲気が似ていたから、ずっと角川書店だと思い込んでいた。
本作はテンが作った美しい山奥“美奥”をテーマとした、民話/おとぎ話5編が紡がれている。

けものはら
小5の雄也、友人・春と共に迷い込んだ野原<けものはら>、そこにいると別な物へと変わってしまう。春が行方不明になってしまった…

屋根猩猩(しょうじょう)」
空想好きな女子高生の美和、クラスメイトは陰湿な猿。美和は不思議な少年タカヒロに出会う、彼は屋根飾りのある尾根崎地区の守り神なのだと言う。

天化の宿(てんげのやど)」
鬱屈した日々を送る少女・ゆうか、双子に連れられクトキを受ける。
意外な終わり方に唖然…苦は自分自身で乗り越えろと言う事か。

朝の朧町(おぼろまち)」
孤独な女性・香奈枝は長船さんに出会う。彼の作り出した町は彼女の心を映し出す。次々と思い出す辛い過去を後に残し、長船さんの故郷“美奥”へと旅立つ…

どれも幻想的で素敵な話だった。
もちろん、一番好きなのは「くさのゆめがたり」、やはりドキドキする話が好きなのだ。恒川氏はこういう少年が主人公の話が巧みで、読者を別世界へといざなってくれる。もしかしたら存在するかも…存在していたら良いと切に望んでしまう夢の世界(“ラピュタ”の世界に行ってみたいと憧れる子供とおんなじ感覚)。
屋根猩猩」も好きだ。小気味良いし、伏線に気付き、ハッとさせてくれた。
彼の小説は夢見がちな少女時代へ戻ったような読後感を与えてくれ、その話の続きを一生懸命考えている自分がいる。

2010.03.12

■秋の牢獄 [小説 恒川編]

Aki no Rougoku by Tsunekawa Kotaro
恒川光太郎/著『秋の牢獄』(2007)角川書店

女子大生の藍。11月7日水曜日の翌日、大学へ行くと親友の由利江が昨日と同じ事を話す、日付を確認すると11月7日だった。
次の日以降も、目覚めるとまた11月7日を繰り返す…秋の一日に囚われてしまったのだ。もう、クリスマスも正月も誕生日も来ない。
そんな孤独な藍の前に一人の青年が現れた「秋の牢獄」…ファンタジー/SF/スリラー

第12回日本ホラー小説大賞を受賞した『夜市』以来、独特な異世界に魅了され、恒川光太郎の本を読み続けている。
2冊目の『雷の季節の終わりに』も素晴らしかった。

しかし、この3冊目の中の「秋の牢獄」は…う~ん、今ひとつ。
主人公が女性で現代がテーマとなり、現実と隣り合わせの異世界を描いてはいるが、私にはのめり込めなかった。
女性がマルボロを吸うのにも違和感、レース好きの男がカッコつけて吸うタバコだと思う(臭いから隠れて吸うタバコ向きではないのでは?)。
前作までは、自分のおかれた境遇を何とかしようと必死に行動する少年達の姿が切々と語られていたが、この「秋の牢獄」は受身だ。
藍は現在の状況を悲観しながらも受け入れるしかない。刹那的な過ごし方しかできないのは分かるが、いつか終わりが来ることを、誰かが自分を解放してくれるだろうと漠然と期待して待っているだけのように思えて共感できず、不満がくすぶっていた。

そんな私の気持ちを変えたのは「神家没落」、この本の中で一番好きな話である。
最初は牧歌的な民話/神話でも読んでいるかのようだったのが、まさかこのような展開になるとは思いもよらなかった…ホラーである。

最初、何を言いたいのか分からなかった「幻は夜に成長する」、幽閉され善行という名の金稼ぎを強いられる女・リオ、特殊な能力を持ったがゆえに孤独な人生を送って来た。人々を救いはするが、彼女が救われる日は来るのだろうか。
それよりも何よりも、とても気になったのはリオの母。たった一人の身内を、やっと取り戻した娘を、彼女はなにゆえ手放したのだろうか?

身近な女性にアドバイスされてはいるのだろうが、作者は男だから女の気持ちまでは表現しきれないという事なのだろうか。
「恒川ワールド」とはちょっと違った雰囲気の3編、たまにサイコなホラーが顔を出す。

2017年11月
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