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2012.04.30

■ロマン 1 [小説]

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ウラジーミル・ソローキン/著『ロマン I』(1998)国書刊行会

19世紀末のロシア。
弁護士の仕事を捨てて、画家になるべく故郷クルトイ・ヤールに戻って来た美しい青年ロマン。
彼は幼なじみであるゾーヤとの再会を心待ちにしていたが、彼女はさえない男性を伴っていた。ゾーヤに幻滅したロマンは、懐かしい人々との触れ合いを堪能し、充実した日々を送る。
そんな時出会った清楚な女性タチヤーナに心奪われ、彼女への愛を確信したロマンは…ドラマ

古典ロシア文学を継承し、かつ現代の文体で表現しているので非常に読みやすいソローキンの小説『ロマン』の前編。かなり厚いハードカバーの上下巻なのでちょっと抵抗があったが、ドストエフスキーやスタンダールに恐れをなした小学生の私ではもう無い。

初夏に駅へ降り立ったロマン、文明の波がひたひたと押し寄せて来てはいるが、変わらず豊かな自然に満ちたクルトイ・ヤール。
馬車が主な交通手段で、貧しい人々は裸足で野山を駆け回り、結婚の持参品は牛や馬の時代。
ロマンは育ての親である叔父夫婦に愛され、地元の有力者達と共にヤマシギ猟や草刈り、蒸し風呂、茸狩りなどを堪能する。男達はロシアの国政を憂い討論を交わす、女達は逞しく働き美味しい料理を振舞う。

物心ついた時から東西冷戦状態で、いまだに北方領土を占領するロシアに対して、何となく先入観を持つ元ソビエト連邦。
しかし、この小説を読んでいると牧歌的な雰囲気はどこの国も変わらない、ましてや田舎者の私にとっては郷愁を誘うおだやかな日常を感じさせる。
映画『チェルノブイリ・ハート』に出演した老人達を思い起こす、汚染地帯で自給自足で暮らす純朴な人々。

Image2241ロシアン・ルーレットや生神女のイコンにおけるロマンの勇姿はアダム・イリッチに義娘タチアーナとの仲を許す為の手段だと考えられる。
しかし、雷の轟く中泳ぎ続けたり、狼を追いかけ死闘を繰り広げるロマンの姿はちょっと変だなと思わせる。
ロマン自身「感じやすく大胆で情動の激しいタイプの人間」と言っていて、こういうところが後編の異常さを匂わせる伏線となっているのではないだろうか。
そう、これは“恋愛小説”の名を借りた“スプラッター小説”。2巻への覚悟が必要であるらしい…まだ読んでないんで(^^ゞ

「持ち前の直情径行きで恐れも呵責もなく自分の激情や信念を貫こうとするが、時にはあまりにも多くのものを犠牲にすることになる。だがなにを犠牲にしたかに気付くのはずっと後のことで、自らの激情のために払った代償の意識によってますます元気づき、いっそう大胆で無分別な人間となる」(P391)
これが信心深い好青年ロマンである。後編へ続く…

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