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2010.03.24

■チューイングボーン [小説]

Chewing Bone by Naotoshi Ohyama
大山尚利/著『チューイングボーン』(2005)角川ホラー文庫

大学卒業後、就職せずに居酒屋のバイトと愛犬サリーとの散歩だけの生活をし、真面目だがこれといって取り得の無い青年・原戸登。
ゼミが一緒だったが一度も口をきいた事がない嶋田里美から連絡を受け、喫茶店で待ち合わせた。そこで彼女はビデオカメラを渡して奇妙な事を言う、「ロマンスカーの展望席から3回ビデオを撮ってください」…ホラー/サスペンス/スリラー

角川書店主催<第12回(2005年)日本ホラー小説大賞>長編賞受賞作『チューイングボーン』、チューイングボーンとは犬が噛む骨。登はゴールデンレトリーバーの雌・サリーを飼っている。母が自殺した後、父が家に連れて来たのだった。

最初は表現がわざとらしくて読むのがダルかった。例えば、ビデオカメラを“動物の臓器の化石”と形容してみたり、歯医者のくだりは長くて、内容には関係無いだろうとウンザリ…
小説を読み進めるうちに、同級生のサトシを思い出した。先生にネチネチと屁理屈をこねて授業を中断させたりして、目立ちたい、自分の存在を誇示したいという中学らしい気持ちをクドさで表現する彼が苦手だった。
その当時の不愉快な気持ちがよみがえり、読書をたびたび中断、他の本を読んだりしていた。
しかし、それは前半だけの事。「えっ、こう来るの?」という展開になってからは、表紙を見るだけでも動悸がし、先を読むのが怖い部分さえある。だが、そこが重要なのだ。そこがあったからこそラストへとつながっていく…どんどん堕ちて行く登。そして、高く飛ぶ。
特に好きなのは手紙の部分。ひらがなが多用されていて、それまで登の独白だった内容と違う流れを感じさせて、読者が納得できる内容にも好感が持てた。

典型的な負け犬の登。里美に会わなければ、彼女の頼みを断っていたら、彼はこのまま流されるままの生活を淡々と続けていただろう。撮影は良い機会だったかもしれない、自分を変える良いきっかけとなり得たのに…そう来たかヽ(´Д`)ノ
単調に過ごして来た登にとっては、自分の目的ができて生活にハリを感じられたのではないだろうか。そう、『タクシー・ドライバー』のトラヴィスのように。行き着く先は予想できるが、ありきたりの小説とは一風変わっているのが良い。
映画だと破滅的な行動をしたが為に収集がつかなくと、夢オチでごまかされる事がある。『隣人13号』とか『ファイトクラブ』とか、『ジェイコブズ・ラダー』も近いモノがある。
しかし、この小説は“夢オチ”などという安易な手法で読者を欺かず、いい感じの方向へ向かってくれる。貴志祐介の『青い炎』のように、破滅へのカウントダウン。

読後感は決して良いとは言えないが、時間の経過に従い後味の悪さが薄れ、ジワジワとこの本が面白さが再認識される。
うん、良い小説だ。堕ちる様が良い。この世は聖人ばかりでは無いし、毎週スッキリ解決し犯罪をおかす明確な理由があるアニメ『名探偵コナン』が白々しく感じる私には、こういうクライム・サスペンス系の方が肌に合う。だが、映画『隣の家の少女』を観に行く度胸は私には無い。

※一部ネタバレの為、文字を白に設定。見たくない人は、ドラッグして文字を反転させない事。

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